アグロフォレストリーとは?他の農業との違いや影響まで紹介
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「アグロフォレストリー」という言葉をご存知でしょうか?
SDGs(持続可能な開発目標)が採択されて以降、自然に配慮した開発や生産の重要性が年々高まる中、注目されている農法です。
この記事では、
- アグロフォレストリーの歴史と特徴
- アグロフォレストリー農法が与える良い影響
- アグロフォレストリーの注意点
- 世界での取り組み
について解説します。
目次
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アグロフォレストリーとは
アグロフォレストリーとは、「農業」をあらわす「Agriculture」と林業をあらわす「Forestry」が組み合わさった造語です。
森林を伐採して農地や牧場を確保する従来のやり方と違い、同じ土地で樹木と農作物を育て、さらに家畜を飼うことで、森林を伐採せずに農作物を育てます。
アグロフォレストリーの歴史・注目される背景
「アグロフォレストリー」という言葉は、1970年中期、カナダの国際開発研究センターの研究者である、ジョン・ベネ氏によって提唱されたと言われています。
しかし、農業と林業、そして畜産業を掛け合わせたような農法自体は世界各地の先住民によって実践されていました。
環境破壊の改善や持続可能な農業への需要が高まってきていることを背景にアグロフォレストリーが注目されるようになりました。
現代の農業は、広い農地を必要とするため、世界各地で森林伐採が行われています。
その結果、地球温暖化を進行させ、生物多様性の損失などの深刻な環境問題を引き起こしています。
しかし、アグロフォレストリーは、森林伐採を抑制しながらも、農作物や木材を生産できるため、環境改善と農家の収入を安定させる有効な対策として注目されているのです。
アグロフォレストリーは農業・林業・畜産業の3つが組み合わさっている
アグロフォレストリーは、農業・林業・畜産業の3つが組み合わさっています。
ここでは、それぞれの農法の組み合わせと特徴を比較していきます。
組み合わせ |
特徴 |
農業×林業 |
林間の空いた土地で農作物を栽培する方法。 樹木は農作物に日陰を与え、土壌の保護と改善、水分と栄養の補充、雑草や害虫対策に役立つ。 |
林業×畜産業 |
放牧地に植樹することで、樹木が牧草と家畜を遮光し、育成を助ける。 または、林間に家畜を放牧する方法。 家畜は自然に餌を得ることができ、その糞尿が肥料となって土壌の栄養につながる。 |
農業×林業×畜産業 |
林間で作物と家畜を育成する方法。 土地の利用を最大化することで、劣化した土壌が再生され、環境への負荷を最小限に抑える。また、収益源が多様化し、農家の収入を安定させる。 |
アグロフォレストリーと他の農業の違い
アグロフォレストリーは、他の農業と実際にどのように違うのでしょうか。
ここでは、慣行農業・自然農法・有機栽培の3つと比較します。
- 慣行農業とのちがい
慣行農法 |
アグロフォレストリー |
機械や化学肥料、農薬を使って効率よくたくさん収穫するスタイル。 |
木と作物を一緒に育てるため手間はかかるが、自然の循環や生態系との長期的な共存が可能。 |
- 自然農法とのちがい
自然農法 |
アグロフォレストリー |
自然の流れにまかせてあるがまま育てる。なるべく人による介入を最小限にする。 |
自然を大事にするが、人のデザインが含まれる。どこにどの木を植えるか、どう組み合わせるかという知恵や工夫で森のような畑をつくる。 |
- 有機栽培とのちがい
有機栽培 |
アグロフォレストリー |
農薬や化学肥料を使わない農法。 |
多様性が前提。いろんな種類の作物や木を合わせて、全体でバランスをとる設計。自然の仕組みそのものを活かして農業に取り込むアプローチ方法。 |
アグロフォレストリーが地球に与える良い影響
アグロフォレストリーは「環境保護と農家の収入源を同時に実現する点」において優れています。
農薬に頼らないことで土壌の栄養バランスが整う
農作物と樹木を共生させることで、土壌の自然な栄養循環を保つことができます。樹木の落ち葉や枝、家畜の糞尿などが分解されることで、土壌の有機物が増加します。
その結果、農薬や化学肥料を使用しなくても土壌の栄養バランスが自然に整い、害虫の被害を最小限に抑えることができます。
樹木の増加によるCO2削減で地球温暖化を抑制する
樹木は二酸化炭素を吸収するため、地球温暖化の進行を抑制することができます。アグロフォレストリー農法では、同じ土地で長期的な育成が可能なため、その効果も継続させることも可能です。
根が強く深く張ることによる土砂崩れの防止
樹木の強くて深い根が土壌に深く広がることで、土壌が安定します。
特に山地や丘陵地などの急斜面では、激しい雨や風によって土壌が流れやすく、土砂崩れや侵食が発生しやすくなっています。
しかし、根が土壌をしっかりと固定し、雨水を土壌に吸収させることで、自然災害のリスクを減少させることができます。
様々な作物の栽培で収入が安定する
アグロフォレストリーは、多様な作物の栽培を可能にするため、収入源が多様化し、農家の経済的な安定性を高めることができます。
一つの作物に依存しないことで、気候や市場の変動に強い農業経営が実現します。
アグロフォレストリーの注意点
アグロフォレストリーは非常に魅力的な農業手法ですが、その実施にはいくつかの注意点もあります。ここでは、4つの注意点について詳しく説明します。
農業と林業を並行していくための広い土地が必要
アグロフォレストリーは、樹木・作物・家畜が共生できる広い土地が必要です。
特に、樹木の成長には数年から十数年かかることが多いため、成長後を見込んだ面積を確保することになります。
狭い土地では、作物と家畜が十分に育たず、アグロフォレストリーのメリットを最大化することが難しくなります。
収益化できるようになるまでの長期的な時間とお金が必要
樹木が商業的に収益を生む大きさに成長するまでは、長い時間を要します。
そのため、短期的な収益を期待する農家にとっては、時間が障害となってしまうケースもあります。
さらに、樹木が成長するまでの間は、農作物の収穫によって生活費や運営費を賄う必要があるので、農作物の収益性が安定していることが重要です。
長期的な視点を持って計画を立て、時間をかけて投資を回収する必要があるのです。
定期的な伐採や作物の植え替えが必要
アグロフォレストリーは、樹木の成長に伴い、定期的な伐採や作物の植え替えが必要です。
そのため、作物の栽培や収穫のスケジュールを森林の成長と調整しながら進めることになるのですが、これらの作業は時間と労力がかかります。
農業と林業の専門的な知識と技術が必要
アグロフォレストリーは、農業・林業・畜産業の専門知識と技術が必要です。
その土地の気候や野生動物の環境も考慮しなければならないため、専門家の指導を活用することも視野に入れなければなりません。
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今回は、アグロフォレストリーについて、他の農業との違いやもたらす影響に触れながら解説しました。
アグロフォレストリー農法は農地確保のために森林を伐採する従来のやり方とちがい、農作物と樹木を共生させることで、土壌の自然な栄養循環を保ちます。森の育成を大切にしている考え方です。
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