「チョコレートの価格がちょっと高くなったかも…」と感じている方がいるのではないでしょうか。
チョコレートの値上がりの背景には、原料となるカカオの価格が世界的に高騰していることがあげられます。
今回の記事では、カカオ価格高騰の原因や、私たちにとって身近なカカオを使ったスイーツへの影響などについて解説します。
目次
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カカオの価格が世界的に高騰しています。
カカオの価格高騰について、わかりやすく解説します。
ロンドンのカカオの先物取引市場では、2022年までカカオは1トンあたり2,000ポンド前後(日本円で約40万※)で取引されることが多い状況でした。
2023年からじわじわと上がり始め、2024年には1トンあたり1万ポンド(日本円で約200万)に達し、過去最高値を更新したのです(※1)。
ここ2年ほどで、カカオが5倍も高くなりました。
カカオの価格があまりにも急激に上昇したことから、カカオ豆不足による価格高騰した状態を「カカオショック」とよぶ声もあります。
※1ポンド193円とする(2025年6月24日の公示相場より)
※1:参考:investing.com「ロンドンココア先物 取引」2025年6月
024年に史上初の1トン1万ポンド(日本円で約200万)を突破したカカオの価格は、その後5,000〜6,000ポンド(日本円で約100万~¥116万)ほどで推移していましたが、2024年の年末にかけてまた高騰しました。
2024年12月には、再び1万ポンドを超える場面がみられました(※1)。
2025年に入ってから、国際ココア機関(ICCO)からのカカオの供給量が増えるという発表を受けて、一時的に価格が下がるという場面もあります。
しかし、いまだ価格高騰前の水準に戻っていない状態です。(2025年6月現在)。
カカオの価格は、なぜ急にこれほどまで高騰したのでしょうか。
カカオの価格高騰の原因である、カカオの不作や投機、離農について解説します。
近年、カカオの生産量が減少し、世界的な需要に対して供給が追いつかなくなっていました。
なぜ、カカオは不作だったのでしょうか。
カカオ価格高騰の1つめの原因となるカカオ不作の理由として、以下があげられます。
これらの原因が重なったことで、カカオ農園ではカカオの樹が弱ったり、枯れたりするケースが相次ぎました。
枯れたカカオの樹を伐採して、新しい苗を植え直したとしても、収穫できるまでに通常4、5年ほどかかります。
肥料を使って一時的に収穫量が増やせたとしても、気候変動や病害のリスクがあるため、安定的に生産し続けられるとは言い切れない状況です。
【関連記事】カカオ不作の原因とは?異常気象や農園が抱える問題を解説
2つめの原因として、不作によって値上がりしたカカオに、投機マネーが拍車をかけたことがあげられます。
投機とは、価格変動を予想して、安く買って高く売ることで差額の利益を狙う取引のこと。
カカオの不作によってカカオの先物価格が上がることを見越した投資家たちが、「カカオは今後値上がりする商品だ」と予測して買い込みました。
その結果、カカオの先物価格がさらに上がり、歴史的な高値につながったのです。
その後、先物市場でカカオの価格が乱高下しています。
一部報道によると、市場に流れていた投機マネーはかなり少なくなったようですが、まだ高騰する可能性ははらんでいるようです。
3つ目の原因は、カカオ農家がカカオ栽培と違う道を選び始めているからです。
カカオは農作物のため、気候変動の影響を受けやすく、先物価格が安定しません。
さらに、カカオの栽培は重労働で危険をともなう一方で、カカオ農家が受け取れるお金は安い傾向にあります。
カカオの先物価格が過去最高になったとしても、カカオ農家が実際に手にする買い取り価格は低いということがあります。。
たとえばガーナでは、カカオ農家からカカオを買い取る価格は政府機関が決めているため、先物価格との間にギャップが生まれることもあります。
そのため、カカオ農家のなかには、カカオ栽培をやめて違う植物を栽培する人や、高値で売れる金の採掘をする人たちがでてきました。
「カカオの価格が上がったら、カカオを原料にしているチョコレートはどうなるの...?」
という方に向けて、カカオ価格高騰がカカオ製品に与える影響を解説します。
カカオの価格が上がったことで、カカオを原料にした製品の販売価格が値上がりしました。
原材料であるカカオの仕入れ価格が上がったため、製品を作るコストが上がり、コストが製品価格に反映されたのです。
実際に、お菓子メーカー各社では、相次いで値上げを行なっています。
ある大手菓子メーカーでは、チョコレート製品全体のうち15%が値上げの対象になりました。
メーカーや値上げの時期にもよりますが、チョコレートやココアなどの値上げ幅は、約6~45%です。
カカオの歴史的な高騰を受け、チョコレートなどのお菓子の原材料と量に変化がみられます。
一例を紹介します。
おもな違い |
例 |
油脂の種類 |
カカオバターの代わりにパーム油やシアバターなどの植物油脂を使ったコンパウンドチョコレート |
原材料の代替 |
カカオ豆の代わりに、ゴボウやエンドウ豆を原材料にしたチョコレートのような味わいのお菓子の開発 |
チョコレートの量 |
チョコレートにクッキーを混ぜた商品や、エアインチョコなど、チョコレートの使用量をおさえつつ、食感や満足感を満たす商品の開発 |
商品の内容量 |
販売価格を据え置く代わりに、商品の内容量を減らして対応 |
原材料や製法を工夫することで、カカオを使ったチョコレートのような味わいが手軽に楽しめるよう各企業工夫をこらして開発しています。
フェアトレードのカカオの商品の需要が増えています。
フェアトレードとは、経済的・社会的に弱い生産者が、強い消費者と公平な条件で取引できる仕組みです。
フェアトレードでは、販売価格に「プレミアム」という奨励金を加算するため、生産者の生活の質の向上につながりやすくなります。
朝日新聞のSDGs ACTION!の報道によると、2024年のフェアトレード市場の12.2%はカカオ製品が占めていて、カカオ製品は前年比169%成長しました(※2)。
フェアトレード商品は、カカオ生産者がより利益を受け取れるようになるため、持続可能なカカオの生産に貢献します。
※2:参考:朝日新聞SDGs ACTION!「フェアトレード国内市場2.2%増 値上げラッシュの中でも堅調に推移、200億円台を維持」2025年6月
カカオの価格高騰はいつまで続くのでしょうか。
ここでは、カカオの価格高騰の見通しについて説明します。
カカオの価格は、異常気象やカカオ膨梢(ぼうしょう)ウイルス、投機などによって左右されますが、しばらくカカオの高値は続きそう、という意見が多いです。
一方で、カカオの価格は異常気象などの状況によって、急落する可能性もゼロではありません。
関税の影響も心配されていますし、カカオの価格高騰に影響を与えた金の価格高騰がいつまで続くかも不透明です。
お菓子メーカーのなかには、カカオの調達先の地域を分散させようという動きもあります。
ただ、カカオの生産地が広がれば、カカオの安定供給につながりますが、カカオは苗を植えても収穫できるまで年数が必要なため、急に大量に生産量が増やせるものではありません。
カカオ価格の不安定さや、カカオ栽培の将来性の不透明さは、カカオ農家の生活の不安定さに直結しています。
カカオの栽培は、天候不順や病害、金の採掘による農園の破壊など、さまざまな問題を抱えています。
カカオ栽培を続けることがむずかしくなったため、農園を手放す農家もいます。
このままでは、将来的にカカオの生産量が減ってしまって、今までのようにチョコレートが楽しめなくなるかもしれません。
そんな未来にならないよう、各国でさまざまな取り組みを行っています。
たとえば、カカオ農家にカカオ栽培の技術を支援したり、カカオ農家の子どもたちへ教育支援をしたりするなど、日本を含む国際的なサポートが進められています。
imperfectでは、これからもカカオ製品を楽しむために、カカオ農家の持続的な営農や安定したカカオ生産のため、様々な取り組みを行っています。
厳しい調達基準のもとカカオ農家からカカオ豆の調達
まず、imperfectのチョコレート商品は厳しい調達基準を設け、適切な営農を運営しているカカオ農家から原料を調達しています。
imperfectは調達の際、生産農家が正当な対価を受けられるよう導入された「Living Income Differential(※カカオ生産者の収入を増やすことを目的とした価格設定メカニズム)」という仕組みを支持し、農家に正当に対価が還元されるようにしています。
また、imperfectの商品の利益の一部は産地での活動を実施する活動費用に充当しています。
カカオ農園は小規模農園が多く、営農知識不足などの課題もあると言われています。
原料調達時の取り組みの他、カカオ生産の持続可能性をあげるため、実際にカカオの生産地であるガーナやコートジボワールで、様々な活動を行っています。
カカオ農園の収入の安定につなげるために
カカオの価格高騰の背景の1つにカカオの不作があると説明しました。
カカオの不作の背景には天候不順の他に収入が安定しないことなどによる後継者不足という課題も存在します。
そういった課題に対応するため、imperfectはガーナのカカオ農家の収入を補完するため、タピオカの原料で知られるキャッサバ芋の栽培と販売ができるようサポートを行っています。
キャッサバ芋は加工して販売するとより高く売れるため、農園に加工機械の導入を行いました。
収入の安定につながるとともに、女性たちの活躍の場の創出にもつながります。
カカオの木やカカオの森の生態系を守るために
異常気象やカカオ膨梢(ぼうしょう)ウイルスに影響を受け不作につながってしまうカカオの生産を守るため、シェードツリー(日陰樹)のと呼ばれる木々の植樹をガーナやコートジボワールのカカオの森にて実施しています。
カカオの木の寿命は、通常50〜80年ですが、日光や風、また異常気象にさらされ続けると寿命が25~30年と短くなってしまいます。
カカオは発芽しても実をつけるまでに4年ほどかかり、収穫量がもっとも多い状態になるには、11~15年必要です。
日光を遮ってくれる木をカカオの木の周辺に植えることでカカオの木を守り、生産性をあげる取り組みです。
カカオの森を守ることは生態系の保全にもつながります。
imperfectは「たとえ不完全(imperfect)でも自分たちにできることから取り組み、世界と社会を少しでもよくしていこう」という想いのもと、世界中の農家の方たちとともに持続可能な社会の実現に向けて取組んでいきます。