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カカオ不作の原因とは?異常気象や農園が抱える問題を解説

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チョコレートやココアの原料のカカオ豆。赤道の南北緯度20度以内という限られたエリアで栽培されています。 

そんなカカオ豆が不作に見舞われていたことをご存知でしたか?
カカオ農園が異常気象の影響を受けたり、カカオの樹が病気になったりして収穫量が減っています。

 

今回は、カカオ豆の不作の原因と背景について分かりやすく解説します。

目次
 
 
 
 
 

チョコレートの値段が上がっている

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チョコレートの値段がコンビニやスイーツ専門店などで上がっていますよね。

高級志向の消費者をターゲットとした商品展開という側面もありますが、
チョコレートの原料となるカカオ豆の不作による価格高騰も背景の1つにあります。 

カカオは限られたエリアの決まった条件下で育つ植物のため、気候などの影響で収穫量が変わってしまうんです。

カカオが育つ気候条件を以下にまとめました。

条件

内容

年間平均気温

27度

年間降水雨量

1,000mm以上

日当たり

半日陰を好む(直射日光はNG)

土壌

ローム、など

水はけ

水はけのよさは必須

おもな産地

・コートジボワール
・ガーナ
・インドネシア、など

世界で生産されているカカオの約6割は、コートジボワールやガーナで栽培されています。
日本は、カカオ豆の約8割をガーナから輸入しています。

カカオの生産地に何が起きているのでしょうか。

カカオ不作の原因

チョコレートの値上がりの背景にある、カカオ不作の原因について解説します。

2021年には、ガーナのカカオ収穫量は100万トンを超えていたにもかかわらず、2024年には50万トンしか生産できませんでした。

カカオ豆不作には主に5つの背景があります。

  • 異常気象
  • カカオ膨梢ウイルス
  • 金の不法採掘による農園の破壊
  • カカオ農家の高齢化
  • カカオ生産国の財政難

異常気象の影響

カカオ不作の原因として、まず異常気象があげられます。

近年、日本でも35度以上超えの猛暑日や記録的な大雨の日が増えて、「今までにない気候だ」と感じる方もいるのではないのでしょうか。

世界各地でも、気温上昇による熱波や豪雨、干ばつなど異常気象が起きていて、人々の暮らしや農作物に影響を与えています。

カカオも影響を受けている農作物のひとつです。

カカオの樹がすくすくと育つには、理想的な気温と降雨量が必要です。

しかし、2020年ごろから毎年、コートジボワールとガーナの一部の地域に集中豪雨がおそっています。

一方で、干ばつに悩む地域もあります。

その結果、カカオの樹が十分に育たず、カカオ豆があまり収穫できない状態になっているのです。

カカオ膨梢(ぼうしょう)ウイルスの被害

異常気象で弱っているカカオの樹に、「カカオ膨梢(ぼうしょう)ウイルス」というウイルスが広がっています。

カカオ膨梢ウイルスに感染すると、カカオ豆の収穫量がぐんと減ってしまい、最終的にはカカオの樹は枯れてしまいます。

一度このウイルスに感染すると、カカオの樹は根元から引き抜かなければなりません。

その後、新しいカカオの苗を植えても、実がなるまでに4~5年はかかります。

そのため、カカオ豆の安定した生産が難しくなっています。

金の不法採掘による農園の破壊

近年、金の価格が高騰しています。

金の高騰を受けて、生活のために違法な手段を使ってでも金を採掘する人たちがでてきました。

金の不法採掘の動きは、カカオ農園にも広がっています。

カカオの樹が植えられている農園でも、違法な採掘業者は「地面から金が出るかもしれない」と考えて農園を掘り起こし、破壊してしまうのです。

また、カカオ農家のなかには、カカオ豆の販売価格に不満を感じて、カカオ農園の採掘権を業者に売ってしまう方もでてきました。

金を採掘することによって、土壌が汚染されるという弊害も起きています。

その結果、カカオの樹が育たず、カカオ豆の収穫量の減少につながってしまいました。

カカオ農家の高齢化

カカオ農家の高齢化もカカオ豆の不作の原因につながっています。

現在、カカオ農園で働く人たちの高齢化が問題になっています。

農林水産省の「令和4年度途上国における持続可能な 原材料生産支援委託事業 」の報告書によると、カカオ農家の平均年齢は55歳です。(※1)

ガーナの55歳はガーナ全体の8%~9%で、高年齢層に分類されると言えるでしょう。(※2)

日本で言うと、80代というようなイメージになります。(日本の80代以上の人口に対する割合は約10%です。)
カカオ農家の仕事は、重労働で賃金が安い傾向があり、カカオ農園の後継者不足につながっていると言われています。

そうすると、カカオ豆を生産すること自体が難しくなる可能性もあります。

※1.農林水産省「令和4年度途上国における持続可能な原材料生産支援委託事業」2025年6月

※2.参考:https://population-pyramid.net/

カカオ生産国の財政難

カカオ生産国のなかには、財政難に陥っている国があります。
そのため、カカオ農家に対する国からの支援が十分でない状況です。

2022年12月に、カカオの世界的な主要生産国であるガーナでは、国の財政が厳しくなり事実上のデフォルト(債務不履行)に陥りました。

デフォルトとは、国が外国から借りたお金を返せなくなる状態のことです。
自国のカカオの樹が病気やアリの被害を受けている状況でも、政府機関などからの農薬や肥料の配布がストップしたり遅れたりしていました。

政府としても、自国の重要な輸出資源であるカカオ生産を守りたいですが、資金が十分にないため、しっかりとサポートするのがむずかしい状況です。

カカオ生産者が抱える問題

カカオの不作に直面しているカカオ生産者は、どのような問題を抱えているでしょうか。

ここでは、カカオ生産者が抱える課題について解説します。

低賃金なのに重労働と言われている

カカオの栽培は、得られる賃金が少ないのに重労働という面があると言われています。

1日の収入が世界銀行の定める国際貧困ライン(1日2.15米ドル)を下回っているカカオ農家も多く、とくに女性の貧困は深刻と言われています。

さらに、カカオの栽培には、危険と手間がともないます。
カカオ豆を収穫して出荷するには、カカオの樹から刃物で実(カカオポッド)を切り取ってナタで割って、カカオの種子を取り出さなくてはいけません。
その後も、手作業でカカオ豆を発酵させ、じっくり乾燥させる必要があります。

このような、危険のともなう重労働をカカオ生産者は低賃金で行っているところもあると言われています。

次世代継承がむずかしいと言われている

カカオ農園の仕事は、次の世代につなげていくのがむずかしいと言われています。

なぜなら、前述したとおり以下のような大変さがあるからです。

  • 収穫量が気候変動に左右される
  • 違法な採掘の被害にあう心配がある
  • 賃金が低い
  • 作業は危険で重労働

そのため、カカオ農家の大人たちのなかには、子どもにカカオ農園を継がせたくないという方もいるようです。
子どもたちからも、カカオ農園を継ぐより、もっとほかの仕事をしたいという声が増えています。

農園の回復には時間がかかる

やせた農園や土壌が汚染されたカカオ農園は、もとの状態まで回復するのに時間がかかります。

カカオの樹が枯れていれば、取り除いて土を耕し、新しい苗を買って植えなくてはいけません。
土壌の状態によっては、その土地で再びカカオを育てること自体がむずかしい可能性もあります。

そもそもカカオは、発芽しても実をつけるまでに4年ほどかかり、収穫量がもっとも多い状態になるには、11~15年必要です。

カカオ農園が回復して収穫できるようになるまでの期間は、収入が安定せず、カカオ農家にとって負担になっています。

カカオ不作問題解決策のための支援

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 カカオ農家が抱えている問題を解決するためには、さまざまな支援が必要です。

ここでは、実際に行なわれている支援の例を紹介します。

苗木の提供や植林

ひとつめは、苗木の提供と植林の支援です。

カカオ農家は、病気で枯れたカカオの樹を伐採して、新しい苗を植えなくてはいけません。

EUDR(森林破壊防止規則)を守り、地球環境を大切にしていくためにも、農地を広げて収穫量を増やすのではなく、限られた土地を使って、単位面積あたりの収穫量を上げていく必要があるのです。

このような状況に対して、日本企業のなかには、カカオの苗木をカカオ農家に寄贈しているところがあります。

また、カカオは日陰を好む植物のため、直射日光が直接降り注がないようシェードツリーという日陰になる樹が必要です。

そのため、imperfectでは、ガーナ農家と協力して、日陰となるシェードツリーの植林に取組んでいます。

imperfectのチョコレートはガーナ産のカカオを使用し、農家さんの持続可能な生産活動につながるよう取り組んでいます。

農園管理のノウハウのレクチャー

2つめの支援の例は、農園管理のレクチャーです。

カカオ農家のなかには、適切な農園管理方法について、十分に理解していない方もいます。

そうした農家に対して、正しい農園の管理方法を伝えることで、カカオの樹が健やかに育ち、カカオ豆の収穫量の増加につなげることが可能です。

たとえば、カカオの樹を病気から守るための農薬の適切な使い方や、シェードツリーの役割など、栽培技術の研修を行ないます。

農家自身が農園管理の知識を身につけることで、将来的にも安定して持続的にカカオ豆を生産できる土台を作ることができます。

日本企業や団体のなかには、農家の知識向上のために、現地で農園管理のレクチャーを行ない、技術向上を支援しているところがあります。

カカオ生産者へのサポート

3つめは、カカオ生産者へのサポートです。

カカオを原料にした商品の販売によって得た利益の一部を、カカオ生産者へ還元する取組みが広がっています。

このような取組みにより、カカオ生産者は労働に対して正当な報酬を得ることができ、生活の安定や質の向上につなげることも可能です。

十分な報酬が得られるようになれば、カカオ農園で働く若者が増え、将来にわたってカカオ栽培が次の世代へと受け継がれやすくなります。

近年、カカオ農家が十分な報酬を得られていないことが問題になっていて、「チョコレートの価格は今まで安すぎたのではないか」という声もあがっています。

カカオの未来を守るために、カカオ生産者を支える仕組み作りが重要です。

カカオのために私たちができること

カカオ豆の不作の原因について解説しました。

カカオ豆は気候変動やウイルス、金の不法採掘の影響など、さまざまな要因により、収穫量が減っています。

imperfectは「たとえ不完全(imperfect)でも自分たちにできることから取り組み、世界と社会を少しでもよくしていこう」という想いのもと、世界中の農家の方たちとともに持続可能な社会の実現に向けて取組んでいきます。

取り組みの1つとして、2025年度は、「環境」「教育」「平等」をテーマに3つの候補から商品を購入いただいた皆様に投票いただき、投票が多かったプロジェクトを実行します。

imperfectは、「あなたの『おいしい』を、だれかの『うれしい』に。」を目標に掲げ、社会的・環境的価値の高い取り組みを通じて生産されたコーヒーやカカオ、ナッツなどの素材を使用し、お客さまにおいしく召し上がっていただく商品を取り揃えています。